カテゴリー「070.15 報道・新聞の倫理」の記事

2008年6月26日 (木)

勘違いしないように!

 明らかに見出しがミスリードな記事。「秋葉原でナイフ持った男逮捕、逃走試み警官にけがさせる」(読売新聞)。少なくともこの見出しでは、「男」が故意に警官を怪我させたとしか読めないのだが…。

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 巡査長が男をパトカーに乗せようとしたところ、男は巡査長からナイフを奪い返して逃げようとしたため、傷害と公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕された。この際、巡査長はナイフをつかみ、親指と人さし指に軽傷を負った。

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 《この際、巡査長はナイフをつかみ、親指と人さし指に軽傷を負った》と書いてあり、これはどちらかというと「事故」(それも業務上の過失でもない)ではないか?故に《傷害と公務執行妨害》ではなく、単に公務執行妨害だけではないかと思う。また、《逃走試み警官にけがさせる》などと書かれる筋合いはないのではないか。

 この犯人に意図的に警官を怪我させようとした意図があるかどうかはわからない。故に、なぜ傷害で立件したのかも不明だ。それどころか記事を見た限りでは、なんで自分が職務質問を受けなければならないのか腹が立ったのかもしれない。もちろんこのように暴力でもって対応するのは言語道断である。

 犯人も警察も読売も、勘違いしてはならないのである。

 参考:「忍び寄る警察国家の影」(白川勝彦)

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2008年6月18日 (水)

捏造される現代史(笑)

 先ほど発表された、本日の「よみうり寸評」があまりにもひどい、いや、それを通り越しておもしろい。

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遺族への謝罪や反省も口にしない。「絞首刑は残虐」と発言した。彼の犯行こそ残虐そのものではないか。あれから事件が変わったという見方もある◆その後、神戸の連続児童殺傷から先日の秋葉原事件まで宮崎事件に類似する数々の犯行が続いた。家庭の崩壊、学校や社会で人間関係が築けず、ネットなど仮想世界に逃げ込んで犯行に走る◆元祖オタクは危険千万な系譜を残した。

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 宮崎勤が「元祖オタク」て。あんたらが誤報まで使って(アニメとは関係ない雑誌の山に、意図的に一番上にアニメの雑誌を置くことによって、犯人がさもアニメに耽溺していたかのように報じたことなど)勝手に捏造したイメージじゃないのか。しかも宮崎勤事件を契機に犯罪の質そのものが変わったわけではないだろうが。変わったのはおまえらマスコミの犯罪に対する見方のほうだ。しかもわざわざここに来てネット叩きですか。江戸の敵を長崎で討つなよ。第一犯罪(あるいは犯罪者)の質の変化を見るにはサンプルが少なすぎるし、なおかつ極端すぎる。こういう安易な文章ばかり生産して、本当に気楽な稼業だよなあ。

 捏造される現代史とは、このことを言う(笑)。

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2007年10月15日 (月)

今度は毎日新聞が…

 「もう少し疑いましょう」で採り上げた、産経新聞が報じた「STOP!STDを考える会」の調査について、今度は毎日新聞が報じた。

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 医療関係者らによる性感染症(STD)啓発団体「STOP!STDを考える会」が東京・渋谷で遊ぶ10代後半の若者にアンケートしたところ、17人に1人がSTDにかかった経験があると回答した。同会は「性行動が極めて活発と思われるグループのデータだが、性感染症の知識は不十分で、知らないうちに病気を広めている危険がある」と分析している。

 調査は8月10~16日、路上などで高校生と10代の卒業生に用紙に記入してもらい、466人分が集まった。性体験があったのは68%で、5.8%が「性感染症にかかったことがある」と答えた。

 また、性関係の相手の数は平均で5.2人だったが、感染経験者に限ると平均37人と7倍以上多かった。
 (性感染症:東京・渋谷の10代後半、17人に1人経験あり(毎日新聞)

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 しかし、これも産経と同様、内容を精査しない、いわば「大本営発表」である。というのも、見出しでは「東京・渋谷の10代後半、17人に1人経験あり」となっているものの、渋谷にいる10代後半の人たちがなぜ《性行動が極めて活発と思われるグループ》と見なすことができるのだろうか。この記事を見る限りでは、アンケートに答えた人全員が《性行動が極めて活発と思われるグループ》と見なされているように思える。

 然るに、《性行動が極めて活発と思われるグループ》について検討したいのであれば、例えば性関係がサンプルの中で、例えば平均や中央値より大きい層とそうでない層を比較するか、あるいは上位数パーセント(4分の1くらい?)である層と下位である層(上位と同じ割合)を比較すべきだろう。いずれにせよ、サンプルが極めて偏っているのはいうまでもなく、こんな調査をなんの疑いもなく報ずる新聞の罪は大きい。何が新聞週間なんだろうね。

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2007年10月14日 (日)

もはや小学生の作文

昨日メモした、連合が非正規雇用者対策を前面に押し出したことが日経で社説になっていた(「連合は非正規対策の実行を」H19.10.14)。この社説は、客観的なデータを踏まえつつ、現在の労働運動と非正規雇用者を重用することの問題点に触れた上で、スタンスとしてはとりあえず見守るというものではあるけれども、高く評価していいとは思う。

 それを踏まえて、本日の朝日の社説をご覧いただきたい。

自殺サイト―もはや見過ごせない(朝日新聞、H19.10.14社説)

 すごいな、これ。まるで小学生の作文だよ。「衝撃的」な事件を引き合いに出したあと、《それにしても、ネットを入り口にした事件が広がっており、見過ごせないところまできている》なんて(客観的なデータや正の効用を示さないまま)煽り、以下のように、これまた優等生的な「正義感」を全面的に押し出す。

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 自殺サイトもなくならない。自殺志願者がいっしょに死ぬ相手を募る。「楽に死ねる方法」を教え合う。そうしたサイトが数百あるともいわれ、たびたび集団自殺の引き金になってきた。

 こうした危ういサイトが野放図に広がっていくことは、なんとしても食い止めなくてはならない。

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 読んでいて恥ずかしくなってくるな。あと、《問題のあるサイトや書き込みを事前に取り締まることは技術的に難しいし、もし規制が行き過ぎれば「表現の自由」を侵す恐れがあるからだ》と書いて、対案に配慮したつもりなのが笑える。しかも締めがこれときた。

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 もう一つ、今回の事件で残念でならないことがある。亡くなった女性が自殺を考えたとき、最後に相談した先が男のサイトだったことだ。

 ネット上には、死にたいと思う人の悩みに耳を傾け、生きる気持ちを取り戻す方向へと導いているサイトもある。

 死ぬことを思いとどまらせる窓口を増やし広げることも、危ういサイトの罠(わな)から防ぐ手だてになる。

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 これで終わり。全然結論になっていないような気がするのは私だけか。

 それにしても、朝日の社説って、社内では比較的地位の高い論説委員が書いているんじゃなかったっけ?それでこの程度の「作文」ですか。まあ、今年の成人の日には、なぜか携帯電話になってしまったり、そんな変な(電波な?)社説が結構出てきたりするので、まあ、これも朝日クオリティ、とすますこともできるかもしれないけど(産経の時とほとんど同じ感想だな)。

 でも、社説がこの体たらくでは、高校生に向かって「大学入試に強い朝日新聞」などということは到底できないような気がする。読むとしても、外部の筆者によるコラムを読んだほうがいいのでは?

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