選挙「後」の青少年関連政策を考えるための5冊+α
ああ、本来であれば1週間ほど前に、選挙の政策を考えるための新書・文庫20冊程度を紹介するという記事を本家のほうで書こうと思っていたのだが、諸般の事情によりできなかった(苦笑)。というわけで、ここでは、選挙の「後」で、特に青少年関連の政策(教育、雇用、労働中心)を考える上での本を採り上げてみることとする。
というのも、マスコミ報道なりマニフェストなり、あるいは(労働や経済などの)専門家のブログなどを読んだりすると、自民党にしても民主党にしても、まともなブレインを立てて政策や政権公約を構築したという形跡がどうにも見あたらないからである。これではまともな政策が打ち立てられる可能性は低いし、ましてや票田にならない(とされている)若年層、子供関連など絶望的というほかない。とはいえこのような状況を変える上で、若い世代に投票に行け、と(半ば脅しの意味を込めて)言うのは得策ではないと私は考える。第一にそもそも人口が少ないのと、第二に次世代のための政策が世代間のパワーゲームで決まってしまうことに対する危惧である。
通俗的な青少年言説、あるいは政治の上での青少年問題という枠組みは、特に教育や雇用、労働の問題が経済や法律や制度の問題であることから逃げるための口実になっているわけで、従って投票者としての我々が考えるべきことは、そのような「青少年問題」という枠組みを外してものを考える、ということにつきる。今回はそのためにたぶん必要となる10冊くらいを、まあ駆け足で紹介することとする。
・後藤和智『「若者論」を疑え!
』(宝島社新書)
いきなり拙著か。しかし基礎的なデータとかはここに十分あると思います。
・苅谷剛彦『教育と平等』(中公新書)
この秋から米国に旅立つ著者の置き土産みたいなもの。教育の地域間格差の解消、平等化とはどういうものだったか。
・濱口桂一郎『新しい労働社会
』(岩波新書)
労働環境に関する制度、及び法律的問題を考える上での基礎的書物であり、なおかつ現時点で最高の書物。
・田中秀臣『雇用大崩壊
』(NHK出版生活人新書)
こちらは経済的問題を考える上での資料。ちなみに田中は最近のブログのエントリーで《各政党とも「都市部の貧しい若者(10~30代)は無視してもかまわない」と思っているからである。それに尽きる。》と書いているけれども、まあ近年の「景気刺激策」なるものを見ているとそういう考えに至るのも非常によくわかる。
・山野良一『子どもの最貧国・日本
』(光文社新書)
政府による所得移転の前と後では後のほうが貧困率が高くなってしまう我が国の再配分政策や、主要先進国に比べて低すぎる家族・教育関連支出の対GDP比など、子供や家族政策を考える上での材料が満載。
・次点
「実存的解決」だとか「革命」とか「精神的貧困の解消」だとかと比べていまいち人気がないのが「既存の学術的手法や法律の活用」。少なくとも経済問題や労働問題の解決に関してはこれより効果的なものはないと思うのだが。これも精神の貧困というものだろうか。なおおすすめの書籍としては、経済なら飯田泰之ほか『経済成長って何で必要なんだろう?
』(光文社)、労働法なら今野晴貴『マジで使える労働法
』(イースト・プレス)あたりが適任かな。
あと、飯田といったら、雨宮処凜との共著『脱貧困の経済学 』(自由国民社)は、少なくとも『経済成長~』の出版記念トークイヴェントの内容を聞いた限りではかなり期待できる内容である。
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