カテゴリー「371.37 メディア教育」の記事

2007年12月 4日 (火)

岩波の元社長を嗤う

 「恥を知れ三浦展」のコメント欄で教えてもらいました。ありがとうございました。

「日本の若者の活字離れは文化の崩壊を予言」(livedoor/朝鮮日報)

 おいおい。岩波の社長を務めた人間がこの程度の認識でどうするんだ。

―――――

 日本最大手の学術出版社・岩波書店に40年間勤務し、うち6年間は社長を務めたベテラン編集者・大塚信一氏(68)が来韓した。大塚氏は2003年に社長を退いた後、新聞社・出版社関係者と活字文化推進委員会を設立、児童・生徒の朝読書や子ども読書奨励運動に携わっている。

 大塚氏は「“考える力を抹殺するテレビやインターネットは何としてでも子どもに近付けてはならない”というノンフィクション作家・柳田邦男氏の主張に全面的に共感する」と語った。

 「携帯電話・インターネット・テレビに取りつかれた日本の若者の活字離れ現象は、文化の崩壊を予言するもの。このような没落の道を韓国が辿らないことを望んでいる」 

―――――

 第一、柳田邦男(笑)の言説を奉じているという点でこの人に「考える力」(笑)がないというのがはっきりとわかるのだが、大体この人って、戦後の少年犯罪の統計とかを読んだ上でこういうことを言っているんでしょうかね。

 何でも《テレビやインターネット》が《考える力を抹殺する》などと言って安易に《何としてでも子どもに近付けてはならない》なんて言説は全く建設的ではない。むしろそういったものを利用して教育に役立てようとするのが真摯な態度ではないか。例えば柳田が「ゲーム脳」「脳内汚染」(笑)まで持ち出して否定しているゲームについては、最近になって「シリアスゲーム」という概念が我が国でも紹介され、ゲームの教育的な効用について注目されている(藤本徹『シリアスゲーム』東京電機大学出版局)。

 それ以外のメディアについても、必要なのは脊髄反射的な否定ではなく、まず実態の把握と活用法だ。これについてはつとに、酒井朗ほか(編)『電子メディアのある「日常」』(学事出版)などで研究の成果が報告されている。

 まあ、大手出版社の元社長がこの程度の認識なら、我が国の学力が低下するのも必至じゃないか(笑。ついでに本日PISAの結果が公表されたが、それを読むのは「日本型で行く けれどもランキングは気になる」(「今日行く審議会@はてな」)や「理科教育の課題」(「教育ニュースへのツッコミ」)に目を通してからでも遅くはない)。ついでに韓国については、朝鮮日報にこのような社説が上がっている。

【社説】世界1位から11位に落ちた韓国の科学教育(朝鮮日報)

| | コメント (2) | トラックバック (0)