2004年・今年の1曲
筆者が2004年に買ったCDの中でもとりわけ私の印象に残った曲を紹介します。今回は、
メロキュア「しあわせ」(作詞:日向めぐみ、作曲:岡崎律子)
笠原弘子/岡崎律子「I'm always close to you」(作詞・作曲:岡崎律子)
中原麻衣/岡崎律子「いつでも微笑みを」(作詞・作曲:岡崎律子)
以上を推薦します。
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その夜、私は岡崎律子氏と日向めぐみ氏のユニット「メロキュア」のアルバム「メロディック・ハード・キュア」を静かに聴いていた。2004年5月11日、岡崎氏の訃報が私の耳に届いた日である。
私が岡崎氏の曲を聴くようになったのは平成14年のことだ。正確に言うと、岡崎氏の書いた曲を、だが。私が最初に岡崎氏の曲と認識して聴いていたのは、声優の林原めぐみ氏のアルバム「iravati」(キングレコード、1997年8月)に収録されている「Good Luck」(作詞・作曲:岡崎律子、歌:林原めぐみ)である。また、林原氏がラジオ番組で何回か岡崎氏に言及していたので、私は岡崎律子という名前を心のどこかにとどめていた。折りしもそのときは、名曲「For フルーツバスケット」(作詞・作曲・歌:岡崎律子/キングレコード・2001年7月)の、声優の堀江由衣氏がカヴァーしたものが上梓されていた。
また、平成14年は、岡崎氏が、シンガーソングライターの日向めぐみ氏と、ユニット「メロキュア」を結成した年でもある。私がこのユニットのCDを買ったのは平成15年6月、メロキュアの2枚目のシングルとなる「1st Priority」(コロムビアミュージックエンターテインメント、2003年2月)であった。翌年3月に上梓されたメロキュアのアルバムを聴けばわかることだが、このユニットはコーラスを重視しているらしく、岡崎氏や日向氏のヴォーカルを、さらに両氏自身によるコーラスでますます洗練されたものにしている。
岡崎氏は2004年に入ってからも、精力的に活動していた。堀江由衣氏のシングル「心晴れて 夜も明けて」(作詞・作曲:岡崎律子/キングレコード・2004年2月)や、ゲーム「シンフォニック=レイン」の曲、メロキュアの最初のアルバム「メロディック・ハード・キュア」(コロムビアミュージックエンターテインメント・2004年3月)、そして堀江氏の最新アルバム「楽園」(キングレコード・2004年4月)に提供した曲など、岡崎氏の関わったCDが多数上梓されていた。多くのファンや関係者は、岡崎氏がこれからもまた大いに活躍することを期待していたかもしれない。そんな中で……突然の訃報だった。
私が今回挙げた3曲は、それらの岡崎氏の曲の中でも岡崎氏の死という事象と重ね合わせてみるとより一層感慨深くなってしまう曲である。
メロキュアの「しあわせ」(メロキュア「メロディック・ハード・キュア」に収録)は、アルバムの中では唯一岡崎氏と日向めぐみ氏の合作である。日向氏が作詞、岡崎氏が作曲と歌を担当する、というスタイルである。日向氏は、この曲の歌詞を恋人同士が語り合うときのシチュエーションを想定して書いたのかもしれない。しかし、この曲の歌詞には、日向氏から岡崎氏に対するメッセージとしての意味合いが含まれているのではないか、と感ずる。同じユニットで2年間走り続けてきた絆。岡崎氏と日向氏の約束。それを岡崎氏が歌い上げる…。
後ろの2曲は、ゲーム「シンフォニック=レイン」のキャラクターソング集「RAINBOW」(キングレコード・2004年5月)に収録されている曲で、歌手はそのゲームに出演している笠原弘子、中原麻衣、浅野真澄、折笠富美子の4氏である。そして、岡崎氏が全曲の作詞・作曲を担当している。
とりわけ印象深いのは笠原氏の「I'm always close to you」と中原氏の「いつでも微笑みを」である。この2曲に共通するテーマは「別れ」であり、二つとも別れる人へのメッセージを含んでいる。そして、二つとも痛切な「悩み」を打ち明けた曲であり、そして希望の光で終わる。笠原氏や中原氏の歌唱もまた、曲のメッセージ性が存分に伝わってくるものに仕上がっている。ここで挙げなかった、このCDに収録されている笠原氏や中原氏のほかの曲、そして浅野氏と折笠氏の曲も、歌詞の並みならぬ叙情性とメロディライン、そして歌が絶妙なまでにマッチしており、たいへん聴き応えがある。まさに今年最高のアルバム、といっても過言ではない。
そして、岡崎氏が生前にレコーディングしていた「シンフォニック=レイン」の曲の岡崎氏ヴァージョン10曲、そして「For フルーツバスケット」の全11曲が収録されたアルバム「For RITZ」が、キングレコードから2004年12月29日――岡崎氏の誕生日にあたる――に発売された。
ぜひ、手にとって聴いてほしい。岡崎氏の愛した音楽を。
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2004年・アルバム8枚
1:笠原弘子/中原麻衣/浅野真澄/折笠富美子「RAINBOW」(キングレコード・2004年5月)
2:岡崎律子「For RITZ」(キングレコード・2004年12月)
3:メロキュア「メロディック・ハード・キュア」(コロムビアミュージックエンターテインメント・2004年3月)
この3枚に関しては、本文で述べたとおりです。
4:千葉紗子「everything」(ランティス・2004年6月)
梶浦由記氏のプロデュースによる千葉氏のオリジナルアルバム第2弾。ミディアムテンポを中心に構成された曲と、透き通った千葉氏のボーカルに思わず聞き入ってしまう。千葉氏が初めてコーラスや作詞に関わった曲もある。
5:林原めぐみ「center color」(キングレコード・2004年1月)
「シャーマンキング」「朝霧の巫女」などの最近のアニメソングや、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のテーマソング「残酷な天使のテーゼ」の再カヴァーなど、林原氏が声優として、ヴォーカリストとして多彩な顔を見せるアルバム。新曲は林原氏にとって初めての梶浦由記氏の作曲。ちなみに、林原氏は平成16年6月に女児を出産した。
6:米倉千尋「BEST OF CHIHIROX」(キングレコード・2004年5月)
デビュー曲であり、OVA「機動戦士ガンダム第08MS小隊」の主題歌にもなっている「嵐の中で輝いて」から、2003年に発表された、アニメ「カレイドスター」の主題歌の「約束の場所へ」まで、米倉氏のアニメ・ゲームタイアップ曲30曲を2枚組で一挙収録。この量と質で値段が税込み3000円とは安すぎる。初回限定版には、奥井雅美氏との期間限定ユニットで歌った「カレイドスター」のオープニング・エンディングも収録。
7:小森まなみ「ユ・メ・ノ・チ・カ・ラ」(キングレコード・2004年7月)
今年、ラジオ番組「mamiのRadiかるコミュニケーション」が20周年、「小森まなみのpop’n!パジャマEye」が10周年を迎えたラジオパーソナリティによるベストアルバム。通販限定だった曲「Life ~上を向いて歩こう~」や、CD未収録の「きゅんきゅんのパワー」、高橋直純氏とのユニットで歌った曲などもある。全曲が小森氏の作詞によるものだが、少なくともこのアルバムに収録されている曲の歌詞のテーマには一貫性があるようだ。それが何かは、このCDを聞いてのお楽しみである。ちなみに、岡崎律子氏が作曲した曲も4曲収録されている。
8:志倉千代丸・編「ゲームボーカルベスト ~志倉千代丸楽曲集Vol.3~」(サイトロンディスク・2004年8月)
ゲームソングで活躍する作曲家が提供した曲を集めたCDの第3弾。「Memories Off」「Missing Blue」「Remember 11」などから14曲を収録。歌手(声優)も、水樹奈々、笠原弘子、田村ゆかり、清水愛、皆川純子各氏など、強力なラインナップ。ちなみに当初では、坂本真綾氏の曲も収録される予定だったらしい。第4弾では入れてほしい。ついでにこの作曲家の書いた歌で最も有名なのは「NOVAうさぎのうた」だろう(笑)。もちろんこのCDには収録されていない。
2004年・シングル収録曲20曲(上位5曲はレヴューつき)
※原則として1枚1曲。また、2004年に発売されたアルバムに収録されている曲は除外した。
1:angela「Shangri-La」(作詞:atsuko、作曲:atsuko・KATSU/angela「Shangri-La」キングレコード・2004年8月)
インディーズから、昨年、アニメ「宇宙のステルヴィア」のテーマソングでメジャーデビューし、一躍人気を獲得したユニットによる、「楽園」からの旅立ちを前にした葛藤を描いた歌。成人式実行委員会の私に言わせてもらえば、これは「成人式で歌いたい歌」だ(笑)。アニメ「蒼穹のファフナー」オープニング。
2:tiaraway「想い出good night」(作詞・作曲:志倉千代丸/tiaraway「想い出good night/can you feel crying alone?」サイトロンディスク・2004年10月)
tiarawayは声優の千葉紗子氏と南里侑香氏によるユニット。この歌は、千葉氏と南里氏をして「tiaraway解散か?」と思わせしめた別れの歌。親しかった人との想い出がフラッシュバックしてくるような歌詞と、千葉氏と南里氏のヴォーカルに魅せられる。卒業式で歌ったら最適かもしれない。もちろんユニットは解散しない。アニメ「W~wish~」エンディング。
3:FictionJunction YUUKA「inside your heart」(作詞・作曲:梶浦由記/FictionJunction YUUKA「inside your heart」ビクターエンターテインメント・2004年7月)
作曲家の梶浦由記氏のソロプロジェクト「FictionJunction」に、声優の南里侑香氏(YUUKA)が歌手として抜擢された。この歌は、聴くだけで夜明けの情景が脳裏に浮かんでくる。南里氏の歌唱と流れるようなメロディラインが魅力。ちなみにFinctionJunction YUUKAの最初のシングル「瞳の欠片」(ビクターエンターテインメント・2004年4月)のカップリング「nowhere」は、別な意味で有名な歌である。理由が知りたくば、検索サイトで「ヤンマーニ」で検索してみよ。アニメ「MADLAX」エンディング。
4:皆川純子「TRUTH」(作詞:皆川純子、作曲:大久保薫/皆川純子「TRUTH/Darkness of chaos」キングレコード・2004年4月)
暗い部屋で一人でたたずんでいる情景が浮かび上がってくる愛の歌。悲壮感が漂う皆川氏のヴォーカルに惹かれる。ちなみに、カップリングの「Darkness of chaos」(作詞・作曲:志倉千代丸)は、アルバム紹介で8番目に紹介した志倉千代丸氏の楽曲集にも収録されている。
5:椎名へきる「メモリーズ」(作詞:椎名へきる、作曲:松本泰幸/椎名へきる「メモリーズ」ソニーレコード・2004年8月)
声優として、歌手として歩んできた10年を、リスナーへのメッセージとして歌い上げた曲。椎名氏の真っ直ぐな想いが伝わってくる。唯一の難点は、この曲が収録されているCDがDVD付きであり、CDにもこの曲と伴奏だけのものしか収録されていないため、割高感を感じる。質でカヴァーしきれているが。
6:水樹奈々「innocent starter」(作詞:水樹奈々、作曲:大平勉/水樹奈々「innocent starter」キングレコード・2004年10月)
※アニメ「魔法少女リリカルなのは」オープニング
7:新居昭乃「懐かしい宇宙(うみ)」(作詞・作曲:新居昭乃/新居昭乃「懐かしい宇宙」ビクターエンターテインメント・2004年8月)
※アニメ「KURAU Phantom Memory」オープニング
8:田村ゆかり「空の向こう側に」(作詞・作曲:太田雅友/田村ゆかり「夢見月のアリス」コナミメディアエンターテインメント・2004年5月)
※ラジオ番組「田村ゆかりのいたずら黒うさぎ」第3期エンディングテーマ
9:高橋直純「還りの泉」(作詞・作曲:高橋直純/高橋直純「Keep on Dancin'」リアライズレコード・2004年4月)
※岩手放送50周年企画CD「FURUSATO~桃源郷イーハトーブの四季」提供曲
10:JAM Project「VICTORY」(作詞:影山ヒロノブ、作曲:河野陽吾/JAM Project「VICTORY」ランティス・2004年4月)
※PS2ゲーム「スーパーロボット大戦MX」オープニング
11:FictionJunction YUUKA「瞳の欠片」(作詞・作曲:梶浦由記/FictionJunction YUUKA「瞳の欠片」ビクターエンターテインメント・2004年4月)
※アニメ「MADLAX」オープニング
12:野川さくら「Joyeux Noel ~聖なる夜の贈りもの~」(作詞:尾崎雪絵、作曲:影山ヒロノブ/野川さくら「Joyeux Noel ~聖なる夜の贈りもの~」ランティス・2004年12月)
※ラジオ番組「野川さくらのマシュマロ♪たいむ」エンディング
13:下川みくに「悲しみに負けないで」(作詞・作曲:下川みくに/下川みくに「悲しみに負けないで/KOHAKU」フライトマスター・2004年10月)
※アニメ「グレネーダー ほほえみの閃士」エンディング
14:水樹奈々「パノラマ -Panorama-」(作詞:水樹奈々、作曲:本間昭光/水樹奈々「パノラマ -Panorama-」(キングレコード・2004年4月)
※PS2ゲーム「ロスト・アヤ・ソフィア」オープニング
15:村田あゆみ「Shining Star」(作詞・作曲:志倉千代丸/村田あゆみ「Shining Star――Memories Off ~それから~ feat. 村田あゆみ」サイトロンディスク・2004年7月)
※OVA「Memories Off 3.5」エンディング
16:諏訪部順一「Believe in you」(作詞:Pazz、作曲:八七/諏訪部順一「Believe in you」NECインターチャネル・2004年1月)
※アニメ「テニスの王子様」キャラクターソング
17:高橋直純「SUMMER WIND」(作詞・作曲:高橋直純/高橋直純「愛しくて」リアライズレコード・2004年8月)
18:田村ゆかり「Sweet Darlin'」(作詞・作曲:太田雅友/田村ゆかり「Little Wish -lyrical step-」コナミメディアエンターテインメント・2004年10月)
※ラジオ番組「田村ゆかりのいたずら黒うさぎ」第4期オープニング
19:堀江由衣、UNSCANDAL「スクランブル」(作詞・作曲:スズーキタカユキ/堀江由衣、UNSCANDAL「スクランブル」キングレコード、2004年10月)
※アニメ「スクールランブル」オープニング
20:保志総一朗「Shining Tears」(作詞:近藤ナツコ、作曲:たかはしごう/保志総一朗「Shining Tears」キングレコード・2004年11月)
※PS2ゲーム「シャイニング・ティアーズ」オープニング
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