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2004年12月 5日 (日)

トラックバック雑記文・04年12月05日

 歯車党日記(石黒直樹氏:ライター)
 わが国を代表するジャーナリストの一人、大谷昭宏氏への公開質問状として書かれているのですが…
 大谷昭宏氏:対話も感情もない「萌え」のむなしさ
 相当ひどい文章です。もちろん石黒氏の文章ではなく大谷氏の文章が。
 大谷氏は、この文章で「若者論」をやらかしています。どのあたりが「若者論」なのかというと、

 この日刊スポーツの紙面でも少しコメントさせていただいた奈良市の有山楓ちゃん(7)誘拐殺人事件。
  書くこともおぞましいが、犯人が「娘はもらった」というメールとともに母親の携帯電話の画面に送りつけてきた写真は、その後、殺害後のものらしいことがわかった。さらに犯人は浴槽のような所で少女を水死させ、遺体に無数の傷をつけていたことも明らかになった。
 もちろんいまの段階で犯人の動機は不明である。だが、私はこれらの状況からどうしても最近気になっていた「萌え」という現象を思い起こしてしまう。

 《最近気になっていた「萌え」という現象を思い起こしてしまう》?どこをどうやったらそうなるのでしょうか。

  もちろんまだ犯人像が絞れないいまの段階で、今度の事件の犯人を直接、この萌え現象と結びつけることはできない。ただ、解剖結果から誘拐直後に殺害しているということは、犯人は一刻も早く少女をモノを言わないフィギュアにしたかったことは間違いない。その上でフィギュアになった少女の写真を母親に送りつけ、ここでもまるでモノをやり取りするかのように「娘はもらった」という言葉を使っている。これまでの誘拐犯なら「娘はあずかった」だ。

 ちょっと待ってください。《犯人は一刻も早く少女をモノを言わないフィギュアにしたかったことは間違いない》なんて、よく書けるものです。大谷氏は、この事件の犯人が「若者」であると勝手に想像した上で、こう書いているのでしょう。確かに、さまざまなメディアで、この事件の犯人が20~30代の男であるという予測が出ています(ただし、その予測を出している多くのメディアが、週刊誌やワイドショーなど、信頼しにくいメディアなのですが)。しかし、大谷氏は、そこからさらにすっ飛んで、犯人の性格や行動、さらにはその背景までを勝手に書き飛ばしてしまっています。
 これは確実に思考停止以外の何物でもありません。
 この事件の犯人が見つかるのは、あまり遠くないと思いますが、もしその犯人像が大谷氏の想像しているものとは違ったら、大谷氏はどうするつもりなのでしょう(この文章は日刊スポーツに掲載されているものです)。自らの過ちを認めて謝罪するのでしょうか。いずれにせよ大谷氏がこのような罵倒文を書いたという形跡は残るわけですから、大谷氏は「大人」としてその責を負わなければなりません。
 結局、大谷氏のこの文章も、自分の気に入らないものと衝撃的な事件を短絡させて、天下国家を論じてしまった「若者論」でしかないのです。蛇足ながら、このような「若者論」にはまってしまうのは、どういうわけか「左翼」的な人が多い(無論「右翼」的な人だって「若者論」にはまります)。「若者論」は、イデオロギー的な位置づけをすれば「保守」、それも「俗流保守」です。ですから、「左翼」的な人が「若者論」を言ってしまうと突如右側に旋回した感じを受けるのですが、周りの人がそれを注意しない、あるいは右傾化として糾弾しないのも、「若者論」であれば保守的になっても構わない、あるいは一貫性を捨てても構わない、という共通前提があるからだ、という気がしてなりません。もちろん推測ですが。
 宮台真司氏は、「右」も「左」も「大きなもの」にすがりたがるという点では変わらない(「右」は「日の丸」、「左」は「コミンテルンの赤旗」)といろいろなところで書いていますが、私は、「若者論」にこそこの構造を見出します。

 大谷氏に対する石黒氏の批判は、至極まっとうです。いわく、

 ちょっと待て! 仮にも30年以上のキャリアを持つベテランジャーナリストである大谷氏が、まさか的外れな偏見や聞きかじりの知識だけで、差別意識丸出しのオタク叩きを大手メディア上で展開するだろうか? きっと大谷氏自身も年季の入ったオタクであり、萌えゲーやフィギュアにはまった末にあのような結論に至ったに違いない! まさかそういった裏付けも無しにああいった発言はしないだろう。何せベテランジャーナリストなんだから。

 参りました。

 そういえば、自称「女子供文化評論家」の荷宮和子氏が、今月10日に『なぜフェミニズムは没落したのか』(中公新書ラクレ)なる本を出すそうです。最近の荷宮氏の活動(『若者はなぜ怒らなくなったのか』『声に出して読めないネット掲示板』ともに中公新書ラクレ)は、「左翼」的な人が「若者論」でもって「俗流保守」に転落してしまうさまを如実に示しております。来年の2月あたりに「悲しみの評論家~荷宮和子と「2ちゃんねる」の内ゲバ~」という文章をここにアップデートする予定です。なぜかくも「2ちゃんねる」的な著者が、ここまでもてはやされるのか、ということに関する研究です。

 お知らせ:私はこのブログで、京都大学霊長類研究所教授の正高信男氏の最近の活動を批判していますが、いっそこれをシリーズ化します。「正高信男という病」「正高信男という堕落」「正高信男という頽廃」「正高信男という落日」「正高信男からの脱却」の5部作にする予定です。
 現在、「病」「堕落」を書き上げました。「頽廃」は執筆中です。

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コメント

この事件とオーバーラップするような、「萌え」系の掲示板の書き込みが
あるそうですね。少女マンガ(NHK教育で放映中のアニメ)『カードキャプター
さくら』のヒロインをモデルにしているそうです。
わが家の娘も好きなアニメなので、残念というか、気持ち悪いというか・・・。
荷宮氏の新書、買って読んでしまいました(^^; 自分自身の感覚と体験だけ
で、よく1冊分も書けたもんだ、という感じの内容です。

投稿: rabbifoot | 2004年12月16日 (木) 20時51分

>「萌え」系の掲示板の書き込みが

2chのCCさくら板だね
住人の話では、あそこは昔からああいう痛い状況だそうな

投稿: yasaikyo | 2005年1月20日 (木) 16時24分

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