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2005年6月18日 (土)

トラックバック雑記文・05年06月18日

 放置プレイにしようと思っていたのですが、リクエストが入ったので斬らせてもらいます。

 ちなみにリクエストしたのは、
 冬枯れの街:「無駄な星なんてあるわけがないだろ?」

 私は仙台在住なのですが、あいにく我が家でとっている新聞が読売新聞なので、東北の地方紙である河北新報がこんなにひどい記事を書いていたとは知りませんでした。ちなみに河北に関しては、私は4回ほど文章を掲載させていただいたことがあるのですが、そのような恩義もこの際一切無視しましょう。

 河北新報:落書き、知力低下反映? 単純な絵などばかり 仙台(Yahoo!ニュース)

 感想はただ一言。

 …河北情けないよ河北。(なぜ私がこのような言い方をするか、と疑問に思われた向きはこちらを参照)

 私も仙台市民として、中心市街地を中心に氾濫する落書きには心を痛めているのでありますが、このような落書きにかこつけて俗流若者論を書き飛ばしてしまう河北にも、正直言って心を痛めてしまいます。最近「この「反若者論」がすごい!02・河北新報社説」で社説を絶賛したばかりなのに。

 あのねえ。犯罪白書読めばわかるけどよ、暴走族(最近は「珍走団」という名称も定着しつつあるよね)の組織人員は減ってるんだよ。しかも、これは作家の重松清氏などの指摘なんだけどよ(重松清、河合幹雄、土井隆義、宮崎哲弥「日本社会はどこまで危険になったか」=「諸君!」2005年1月号)、暴走族の人員はむしろ高齢化してんだよ。背景には暴力団が牛耳ってて足を洗いづらいことが大きな理由だがよ。しかもなんだよ、この記事に出てくる自称「識者」どもは。こんな馬鹿連中の戯言にかこつけて「今時の若者」全体を語った気になってんじゃねーよ!しかも、この手の記事にとってはもはやご定番なんだが、過去との具体的な比較、一切なし!他の地域との比較、一切なし!この記事を書いた記者よ、出てきやがれ!!絞め殺すぞ!!!冗談だがよ。

 いい加減にしてほしいものです。このようなものでさえ記事になってしまう、という現在の俗流若者論、若者報道の現状には、ほとほと呆れてしまいますよ。所詮「今時の若者」は貶められてナンボなのでしょうね。

 栄枯盛衰、満つれば欠ける、とはよく言いますけれども、俗流若者論は、「酒鬼薔薇聖斗」事件以降に一気に勢いを増してから、もうとどまるところを知りませんよね。それどころか、むしろ隆盛の一途ですね。でもこれらの俗流若者論は、所詮張子のリヴァイアサンです。いつか、良心的な学者や評論家によって、少しずつ解体されるのを期待するしかないのでしょうね。

 というか、俗流若者論を解体するための本も、たくさんあるはずなのですが。売れているのは『反社会学講座』くらいなのが哀しい。まあ、俗流若者論を解体するための本は、大抵は地味か、高いか、その両方かですからね。『反社会学講座』は、易くて派手だから売れたものなのでしょうが、この本で展開されている論理が実を結ぶのは、いつの頃になるのでしょうかね。

 もう、こんな記事を読んだ私の感情を、声優の茅原実里氏が代弁していましたよ。

 minorhythm:茅原実里、本日はご立腹です(茅原実里氏:声優)

 茅原氏は傘を盗まれたことに怒っていますが、私はこんなにひどい記事でさえも不通に流通してしまう現状に激怒しております。俗流若者論系のトンデモ本や新聞・雑誌の記事も延々と出されますし。

 もう一つ、我々が怒っていいものがあります。
 弁護士山口貴士大いに語る:松文館裁判判決速報(山口貴士氏:弁護士)
 kitanoのアレ:松文館裁判:高裁でも不当判決

 「松文館裁判」。我が国ではじめて、「絵」にわいせつ罪が適用された裁判です。東京地裁の判決では、裁判で取り上げられた漫画の作者と、版元の社長に懲役刑が下ったのですが、弁護側が不服として控訴しました(ちなみに山口貴士氏は、この裁判の被告側の主任弁護士です)。で、この裁判において、宮台真司氏(社会学者)、斎藤環氏(精神科医)、奥平康弘氏(憲法学者)などが被告の立場から逮捕・告訴の不当性を主張してきましたが、それでも無罪を勝ち取ることができなかったとは…。

 弁護側は、これを不服として上告するでしょう。もしこの裁判の判決が判例として確定してしまったら、警察は好きなように「有害」コミックを摘発できるようになり、わいせつ罪の恣意的な運用が裁判において続々と行なわれるようになるでしょう。

 いささか言いすぎじゃないかって?いや、私がこのように断言するのは、この松文館裁判のいきさつを最近買った本で読んだからです(長岡義幸『「わいせつコミック」裁判』道出版、2004年1月)。

 そもそもここで取り上げられている漫画家と版元の社長が摘発されたのは、ある警察官僚出身の国会議員に寄せられた一通の投書がきっかけでした。そして、その議員が警察にリークし、漫画家と版元の社長は不当に逮捕されてしまった…。

 その「警察官僚出身の国会議員」とは…。

 平沢勝栄。

 カマヤンの虚業日記:[選挙]都議会選挙
 走れ小心者 in Disguise!:ブログ版『えらいこっちゃ!!』(20)(克森淳氏)

 都議会議員選挙ですか。私は宮城県民なので、選挙権があっても直接は関係ないものですが、ただ言論統制に断固として抵抗する立場としては、この2つのブログで取り上げられている「石原三羽烏」、すなわち古賀俊昭、田代博嗣、土屋敬之の3氏の当選は阻止しなければなりませんね。特に古賀氏と土屋氏は、産経新聞の月刊誌「正論」に出現する回数が高く、そこでも威勢がいい「だけ」の論理を飛ばしまくっていますから。

 それにしても、最近俗流保守論壇の空疎な現代日本人論や若者論が、彼らにしか理解できない共同幻想に基づいているのは、それこそが現代の論壇の行き詰まりを表しているように思えます。その点において、下のブログは必読でしょう。

 ヤースのへんしん:『バーチャル男』萌え

 非常に的確な指摘があります。

 力仕事が中心だった時代を生きてきた「男」にとって、力のいらない時代になり、多くの女性が社会参加をし、能力を発揮しだすと、中途半端な能力ではもう付いていけない、でも、どこかで「男」としての生き方はしたい。そんな気持ちの現れなのかもしれないですね。

 しかし、これらの「男」と「大人」の中身って「孤独」「個人」に集約されてませんか?結局は一人でオタクのように時間を潰すのでしょうか?「萌え」てるわけですね。

 「萌え」の使用法が違うと思いますが、少なくとも、某石原都知事をはじめ(その某都知事に対する批判はこちらを参照してください)、安易にナショナリスト的な言説を振りかざす俗流若者論者の最大の問題点を、ここまで凝縮して言い当てて見せた文章は皆無です。

 週刊!木村剛:[ゴーログ] 「なんとか審議会」は「なんとか」をやっているのか?(木村剛氏:エコノミスト)
 保坂展人のどこどこ日記:小泉語の摩訶不思議、「お互いに反省しよう」(保坂展人氏:元衆議院議員・社民党)

 以前、「俗流若者論ケースファイル13・南野知恵子&佐藤錬&水島広子」で、国会の「青少年問題に関する特別委員会」の議事録を批判したことがありますけれども、この議事録から見えることは、青少年問題に関する言説は、結局のところそれを語る人の社会観、世界観の凝縮である、という気がしてなりません。例えば佐藤錬氏(自民党)は、この特別委員会で、堂々と自己陶酔的な歴史観を述べていたのですから。それ以外にも、例えば最近ベストセラーになっている『壊れる日本人』(新潮社)の著者、柳田邦男氏(ノンフィクション作家)は、現代の青少年の行動(当然、過度に醜悪化、図式化、単純化されたものです)に「ケータイ・ネット依存症」の影を見出し(柳田氏こそが「ケータイ・ネット批判依存症」だろうが、という突っ込みは置いておいて)、曲学阿世の徒・京都大学霊長類研究所の正高信男教授は同様の青少年の行動に「ケータイを持ったサル」というレイシズムを押し付けることによって「日本人の退化」を嘆いてみせた(知性が退化しているのは正高氏ですよね)、スピリチュアル・カウンセラーの江原啓之氏は(この人は、堀江貴文氏よりも格段に「虚業家」ではないかと私は思います)これまた同様の青少年の行動に関して「たましい」(我々が普段使っている「魂」とは違います、あしからず)の劣化した存在とまたレイシズムを押し付けました。結局のところ、俗流若者論を安易に振りかざす人たちは、その社会観の貧しさを如実に表している、いわば、馬脚を現しているのです。このような人たちは、即刻退場していただきたいですね。

 それにしても、「論座」平成17年6月号に掲載された、「自民党議員はこんなことを言っている!」なる、「論座」編集部による自民党改憲派議員の「妄言録」は、読んでいてうんざりします。なぜって、編集部の人たちは気付いているかはわかりませんが、ここに出てくる発言のほとんどが、憲法にかこつけた俗流若者論だからです。近く「俗流若者論ケースファイル30・自民党改憲派議員」として、憲法にかこつけた俗流若者論の問題点を抉り出そうと考えていますが(29回はノンフィクション作家の吉田司氏を採り上げる予定です)、改憲派の中には、「今時の若者」にかこつけた改憲論を自信満々に開陳する人たちがたくさんいます(この中の一人である、ジャーナリストの細川珠生氏に関しては、「俗流若者論ケースファイル31・細川珠生」で採り上げます。「諸君!」平成16年5月号を読んで予習しておいてください)。まあ、彼らにとっては、青少年それ自体よりも、青少年に対する不信感を煽る言説に扇動される人たちのほうが得票数や部数の上昇につながるのでしょうが、私はここで、青少年の不当な「政治利用」を許すな!と言いたい。

 あと、保坂展人氏は、《小泉内閣は「自民党」は壊さなかったが、日本語はブチ壊した》と述べておりますけれども、日本語を壊したのは、小泉内閣だけではありません。俗流若者論も、です。俗流若者論は、その場しのぎのただ過激なだけの言葉を吐いて、無責任に去っていく。そして、そのような過激なだけの言葉は、人々の不安を扇動させるだけさせて、結局現実の青少年を苦しめる。

 ン・ジュンマ(呉準磨)の備忘録:使える論壇誌(笑)
 オピニオン系の雑誌は、その多くが赤字経営であるそうです。しかし、私見によれば、このような雑誌は、たとえ読む人が少数であっても、そこで実りのある言論が展開されていれば、赤字覚悟でも出し続けるという志がなければいけないような気もしています。このような雑誌の存在は、一点突破的になりがちな「世論」を諌めるために一役買う役割を負わなければならないと思います。

 それにしても、この手の雑誌で一番売れている「正論」は、この手の雑誌の中では一番面白くない雑誌です。なぜって、毎号毎号同じような見出しと内容ばかりで、最近は陰謀論まで飛び出している始末ですからね(「俗流若者論ケースファイル25・八木秀次」「俗流若者論ケースファイル28・石堂淑朗」を参照されたし)。特に「世界」や「論座」といった左翼寄りの月刊誌は、既存の枠組みを反芻するのではなく、もっと問題の本質を切り込むような――これについては、「論座」の平成16年4月号の特集における、斎藤環氏と宮崎哲弥氏(評論家)と金子勝氏(経済学者、慶應義塾大学教授)の対談で触れられていましたが――特集をやって、若年層やビジネスマンを取り込むような試みをするべきでしょう。
 ちなみに私の現在のお勧めの月刊誌は、「論座」と「中央公論」です。また、「世界」今月号は、鈴木謙介氏(国際大学グローバル・コミュニケーションセンター研究員)による「若年層の右傾化」論に対する反論と、ジャーナリストの二村真由美氏による江本勝(「水は答えを知っている」などでおなじみの人です)批判につられて、思わず購入してしまいました。月刊誌編集部の皆様、俗流若者論批判と、疑似科学批判は「買い」ですよ。

 お知らせ。以下の文章を公開しました。
 「俗流若者論ケースファイル26・三砂ちづる」(6月3日)
 「この「反若者論」がすごい!02・河北新報社説」(同上)
 「俗流若者論ケースファイル27・毎日新聞社説」(6月4日)
 「壊れる日本人と差別する柳田邦男」(6月6日)
 「俗流若者論ケースファイル28・石堂淑朗」(6月14日)

 また、久しぶりに書評を書きました。トンデモ本の書評ですが。

 柳田邦男『壊れる日本人』新潮社、2005年3月
 title:俗流若者論スタディーズVol.3 ~壊れているのは一体誰だ?~

 初めて全編会話調で書評を書きました。

 もっとも、広田照幸『教育言説の歴史社会学』(名古屋大学出版会、2001年1月)、内藤朝雄『いじめの社会理論』(柏書房、2001年7月)などといった良質な本も多く読んでいるので、そちらの書評も充実させるつもりです。

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コメント

早速リクエストお答えいただいたみたいでどうもありがとうございます。何か事件が発生してその事件の発生要因を探求するこのこと自体は某か意味があるのでしょう(個人の生い立ちなんかは野次馬的好奇心を満たす以外の何ものでもないと思いますけれども)。ただそこから過剰に妄想や思い込みを加算して若者一般に拡張してしまう次のステップが意味不明という点で同感です。ただこのステップ自体の解体が浸透しない以上「今の若者は~」という類の言説でもって今の若者が大人になったときに手を変え品を変えまた同じように再生産されると悲観視しています。

投稿: 遊鬱 | 2005年6月19日 (日) 23時10分

これから立ち読みしてきますが、
講談社現代新書の新刊に
酒井潔「自我の哲学史」
というのがあるようです。

「デカルト、カント、ライプニッツからハイデッガー、レヴィナスまで…宮沢賢治や西田幾多郎の自我論とは?
日本人に自我はいらない!」
//shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1497928

半分冗談でも、デカルト主義者を自認する
私には、「喧嘩売ってるのか!?」とも、
「トンデモ本か?」ともとれそうですが、
またぞろ「日本人」とか「最近の人」とかを
特別視するネタか?と思うとウンザリですな、
というのは見てから改めて論評を。
後藤さんも時間があれば!


投稿: ン・ジュンマ(呉準磨) | 2005年6月21日 (火) 13時56分

お前は論座や世界を読むような馬鹿サヨだったのか
失望したぜ

投稿: 公共管理人 | 2007年11月18日 (日) 03時52分

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