トラックバック雑記文・05年10月22日
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忙しくて更新する暇がないよ…。
kitanoのアレ:ジェンダーフリーとは/暴走する国会/憲法調査会報告書
成城トランスカレッジ! -人文系NEWS&COLUMN-:ageまショー。
カマヤンの虚業日記:「霊感詐欺する権利」なんか存在しない
グーグルで「ジェンダーフリー」を検索すると、自民党のプロジェクトだとか(統一教会の機関紙である)「世界日報」の記事とかが上のほうにヒットしてしまうそうです。で、それらの記事は、徒に「ジェンダーフリー」を危険視したり、あるいは陰謀論まで持ち出して的はずれの批判をしたり、というものが多いようです。私はこの手の言説を、産経新聞社の月刊誌「正論」でよく読むのですが、こういう言説を展開する人たちの歴史観を疑いたくなりますね。結局のところ「自分が理解できない奴らが増えたのは自分が判定している政治勢力の陰謀だ!!」って言いたいだけでしょ。こういう人たちは、酒場でのさばらせておく分には害はないのですが、実際の政治に関わっているのだから無視できない。
そこで「成城トランスカレッジ!」の管理人が発足したプロジェクトが「ジェンダーフリーとは」というウェブサイトです。このサイトは、「ジェンダーフリー」に関する論点や、それの批判に対する反駁、また混同されることの多い「男女平等」と「ジェンダーフリー」の違いなどを説明した優れたサイトです。
しかし、「kitanoのアレ」に貼られている、自民党の「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」(安倍晋三座長)のバナー広告を一部改変した広告が面白い。何せ《まさかと思う訴えが父母から寄せられています。自民党は責任を持って性感染症を増やします》ですからね。ただこのようなパロディは正当性があります。というのも、性感染症など、性行為にまつわる疫病・感染症を予防するためには、適切な処置をとらなければならない。従って、それに関する知識も必要になる。ところが自民党の推し進めている性教育とは、「性行為は害悪だ」「性行為はするな」の一点張りのようです。
社会学者の宮台真司氏が、数ヶ月前の「サイゾー」で、宮崎哲弥氏との連載対談において、「「過激な性教育」が問題だというが、それで初交年齢が上昇したり、性感染症が阻止できたら問題はないのではないか」といっていた記憶がありますが、こういう認識に照らし合わせて自民党のプロジェクトを考えてみると、「たとえ自分たちが望む結果になったとしても(社会的問題が解決されたとしても)、自分の望む手段で解決されなければ嫌だ」ということになるのでしょうか。
これに関してもう一つ。
成城トランスカレッジ! -人文系NEWS&COLOMN-:名コンビ。
この「反ジェンダーフリー」の旗手である、高崎経済大学助教授で「新しい歴史教科書をつくる会」現会長の八木秀次氏と、「つくる会」初代会長の西尾幹二氏の対談本『新・国民の油断』(PHP研究所)が書店に並んだとき、私は軽く読んでもうこの手の議論には付き合いたくないや、と思ったのですが、こんなに面白い俗流若者論の本だったとは。あとで読んでみようかなあ。
ついでに、私のブログでも八木秀次氏に関して言及したことがありますので、参考までに。
さらにこの「つくる会」や、自民党の右派系の国会議員が推し進めている教育基本法改正について言うと、東京大学助教授の広田照幸氏が最近『《愛国心》のゆくえ』(世織書房)という本で、その「改正」について批判的に検証しております。お勧め。
まだまだ教育の話。
もじれの日々:記事群(本田由紀氏:東京大学助教授)
本田氏が引いている調査について。
*「幼児の就寝時間早まる 積み木・泥遊び増/「遊び相手は母親」8割 首都圏対象のベネッセ調査」
これはたぶん、ハイパー・メリトクラシー(「人間力」みたいなもん重視)下における家庭教育指南言説の蔓延の影響だ(近刊拙著第1章・第5章参照)。それにしても平日に一緒に遊ぶ人が、「きょうだい」「友達」が10年間に10%減った代わりに「母親」が55%から81%まで急増しているのはすごい。子供の「人間力」(私の言葉では「ポスト近代型能力」)育成エージェントとしての重圧を母親=女性が一身に引き受け、「パーフェクト・マザー」責任を果たそうとしているのだ。しんどいことだ。
本田氏のコメントは、至極正鵠を衝いているものだと思います。青少年問題をめぐる言説については、どうも最近になっても依然として「本人の責任」「親の責任」を強調するのが多い。こういう「責任」、特に「親の責任」を強調するものについては、過剰に親に求めすぎるようになり、親が社会的な支援、第三者による支援を受けるチャンスを奪ってしまう。
最近は「健全な規制の下に健全な精神が育つ」みたいな意見がはびこっていますからね。子供が「健全」に育つためには、国家や親によって適切に「指導」されなければならない、と。若年無業者対策にしても、最近なぜか強調されるのは職業能力ではなく「適切な職業観」ですからね。精神こそが大事である、という考え方には一理あるとは思いますが、それが行き過ぎると過度の教育主義にならざるを得ない。
ついでに言うと、本田氏の言うところの《「パーフェクト・マザー」責任》については、広田照幸氏が分かりやすくまとめておりますが(広田『日本人のしつけは衰退したか』講談社現代新書)、最近は「「パーフェクト・ファザー」責任」みたいなものも出てきているようで怖い(例えば「父親の育児参加」議論の一部とか)。
もう少し教育の話を。
フィギュア萌え族(仮)犯行説問題ブログ版:10月13日「どうやってゲームを規制するのか?」と、中立性を欠いたNHKの報道(古鳥羽護氏)
この手の報道にはもう飽き飽きしました。マスコミは、早く最近のメディア規制論が政策的判断ではなく「「世間」の身勝手」「為政者の身勝手」によって推し進められていることを理解したほうがいい。
明日の宮城県知事選挙にも、松沢“ゲーム規制”成文氏と中田“行動規制”宏氏が推薦を表明している人が出馬しているからなあ(ちなみに新仙台市長の梅原克彦氏はこの人を推薦しております)。対抗馬は現在の浅野史郎知事の路線を継承、そのほか片山善博氏なども推薦し、民主党と社民党の推薦を受ける人。ただ、浅野知事もどうやらゲーム規制には前向きのようで、いくら民主党と社民党が推薦しているとはいえ注視しなければならない。あとは共産党推薦の人。共産党もメディア規制に関しては怪しいところが多いからなあ。今回は投票はあまり乗り気ではない。まあ行きますけどね。一応私は民主党(もう少し詳しく言えば民主党左派、あるいはメディア規制反対派)支持だし(ただ党幹部に枝野幸男氏が入らなかったのが残念だけど)。
あと、このエントリーで気になったのがコメント。ちなみにこのコメントは「フリーターが語る渡り奉公人事情」の管理人によるもの。
上の世代のなかでメデイア・リテラシーの低い人たちは、ひきこもりとニートとフリーターの区別もつかずに勝手に人をバケモノにしたてあげ、取り乱したり、攻撃したり、他人の権利を不当に制限したがったりしています。若者の自立を支援する団体のなかには、大学生の不登校まで治療の対象とみなすところもあるくらいです。
わたしが、以前マスコミ報道にかつがれて連絡した団体も、大学生不登校とフリーターと引きこもりとニートの区別もつかないまま、いまどきの若者全般が反社会的で未熟でだらしないとの前提にたって、道徳的な説教をしていました。なんと、それらは反革命だという政治的弾圧さえしていました。
で、この書き手自身のブログにおけるエントリーが次のとおり。
フリーターが語る渡り奉公人事情:反革命ばんざい!
このブログの管理人が間違って参加してしまったあるセクトについての話なのですが、この文章を読んでいる限り、少なくともこのセクトは運動によって社会を変革することを目的としている、というよりも運動が自己目的化している、と言ったほうがいいでしょう。要するに、仲間と一緒につるんで運動することによって「感動」を得ることこそが究極の目的である、と。この団体に関して、重要なのはむしろ「感情を共有できる人」であり「共同幻想」である。この団体が、「ひきこもり」の人たちを過剰に排撃するのは「共同幻想」を共有できないから、ということで説明できるのではないでしょうか。
それにしても、この「共同幻想」論、もう少し論理の展開の余地があるような気がするなあ。例えばつい最近短期集中連載という形で批判した民間コンサルタントの三浦展氏の著書『「かまやつ女」の時代』(牧野出版)や『下流社会』(光文社新書)の問題点もこれで説明できるような気がする。要するに、三浦氏の理想とする「高額のものを消費するための自己実現(としての就労)」みたいな流れにそぐわない人はみんな「下流」とか「かまやつ女」みたいに罵倒されてしまう、という感じ。
ついでにフリーターや若年無業問題に関わる本の書評ですが、最近忙しいので、11月中ごろになってしまう予定です。一応、前回(10月12日)からの進行状況は次のとおり。
読了し、書評も脱稿したもの:丸山俊『フリーター亡国論』ダイヤモンド社
読了したが書評を書いていないもの:浅井宏純、森本和子『自分の子どもをニートにさせない方法』宝島社、小島貴子『我が子をニートから救う本』すばる舎、澤井繁男『「ニートな子」を持つ親へ贈る本』PHP研究所
あと、予定していた、小林道雄『「個性」なんかいらない!』(講談社+α新書)の検証ももう少し遅れます。最近だと、「週刊文春」などで「ゲーム脳」の宣伝に努めている、ジャーナリストの草薙厚子氏が『子どもを壊す家』(文春新書)という新刊を出したそうで。こちらもチェックしておく必要がありそうです。
保坂展人のどこどこ日記:止まれ、共謀罪(保坂展人氏:衆議院議員・社民党)
カマヤンの虚業日記:[宣伝]「『不健全』でなにが悪い! 心の東京『反革命』」
どうも最近、きな臭いことが多いなあ(共謀罪とか、メディア規制とか)。「心の東京「反革命」」に関しては、米沢嘉博氏(コミックマーケット準備会代表、漫画評論家)と長岡義幸氏(ジャーナリスト)が発言するそうなので、参加したいのですが、いかんせん金がない。私は仙台在住なので。
こんなときは、河原みたいなどこか人気の少ないところに行って夕陽でも眺めながら何も考えずに座っていたい。
minorhythm:どこまでも…(茅原実里氏:声優)
《あまりにも綺麗で、ほんの少しだけ切なくなって…ほんの少しだけ優しい気持ちになって。》とは茅原氏の言葉。こういう感動を味わうことのできる場所があればいいのですが、最近の青少年政策を見ていると、青少年からこういう場所を奪ってしまうのだろうなあと憂鬱になる。家庭も親と青少年言説による監視の眼が日々強くなっている。青少年言説の支配する社会とは、子供から全ての逃げ場を奪い「適切な」監視の下で「適切な」道徳が育っているかのごとき幻想を「善良な」大人たちに抱かせるものに他ならないのです。で、少年犯罪やら何やらが起こると「まだまだ監視が足りない!」と言い出す。今のままの青少年政策はループです。
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