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2007年7月15日 (日)

平成19年参院選マニフェストにおける青少年政策の評価

Sentan2007natu  (「選挙たん(仮)」は、サイト「選挙に行こう」のマスコットキャラクターです)
 (この記事においては、公職選挙法の規定に基づき、特定の候補者の名前を出すことは控えております。従って、この記事は、特定の候補者を支援、または批判する「文書図画」にはあたらないものと私は考えます)
 参考:公職選挙法について

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 冬枯れの街:【祝】13日の金曜日~人を呪わば穴いくつでも掘る覚悟を!~

 さて、参院選の公示が出され、ついに選挙戦に向けて各党が動き出すこととなったが、各党はマニフェストという形で、自らの党が進める政策を公約として広報している。また、それについて、例えば「言論NPO」などのように、総合的、あるいは各論的に評価するような動きもあり、あるいは私の所属している「POSSE」などは、どの点に注意して読むべきか、ということを提示している(「style3的マニフェストチェック」)。

 私も、前回の衆院選に引き続き、青少年言説を検討してきた立場から、青少年に関わる政策の記述(教育、若年雇用など)を検討していこうと思う。今回は、以下の政党のマニフェストを対象とする。なお、今回は、都合により、前回行なった全体の感想の比較を割愛することとする。

 自由民主党(以下:自民)
 http://www.jimin.jp/jimin/jimin/2007_seisaku/kouyaku/index.html
 公明党(以下:公明)
 http://www.komei.or.jp/election/sangiin07/policy/index.html
 民主党(以下:民主)
 http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2007/index.html
 社会民主党(以下:社民)
 http://www5.sdp.or.jp/central/seisaku/manifesto07s.html
 日本共産党(以下:共産)
 http://www.jcp.or.jp/seisaku/2007/07saninseisaku/index_kobetsu.html
 国民新党(以下:国民)
 http://www.kokumin.or.jp/seisaku/senkykouyaku.shtml
 新党日本(以下:日本)
 http://www.love-nippon.com/manifesto.htm
 共生新党(以下:共生)
 http://www.kyoseishinto.org/p/21

 1. 教育
 1.1 総論および評価軸
 「教育」についてもう長い間とやかくやかましく言われ続けているけれども、特に政策としての教育を語る上でもっとも大事なことは、その政策が本当に(できるだけ)客観的な事実に基づいているか、あるいはそれを推し進めるための根拠は何か、ということである。従って、例えばマスコミで採り上げられるような極端な事例を、さも全体を代表する例であるかの如く取り扱って、それで政策を構築してしまう、というのは、はっきり言うが非常に度し難いこととしか言いようがない。

 ところがそれを平気でやらかしてしまう人たちがいる。それが、かつての教育改革国民会議であり、また今の教育再生会議である。特に後者に限って言うと、まず人選からして教育学の専門家を入れようとする気配はなく(準専門家といえるような人だって品川裕香くらいである。大学関係者にしても、小宮山宏と中嶋嶺雄がいるけれども、彼らが教育学に付いてある程度精通しているとは思えない)、せいぜいメディアで話題になった人たちとか、あるいは政府と結びつきの強い財界人ばかりである。こんなところに教育政策についてまともな議論を要求する方がおかしいのかもしれない。

 とはいえ、仮に政権交代が起こり、この「会議」が解散させられたとしても、また同じようなものが結成される可能性もないとは言えない。そもそも我が国の「教育」政策自体、何回も何回も「改革」の必要性が叫ばれ続けたけれども、それによって教育現場の状況が改善されたとはとても思えないし、昨今のものに関しては、一部の事例をわざと社会的な大問題にでっち上げて、自分で処理する(あるいは「処理する」という態度だけを示す)という、いわばマッチポンプのようなものさえも感じてしまう。

 さて、この項目に関する評価軸であるが、何よりもまず金銭的な問題、つまり支出や予算の量、あるいはそれを調達する手段について触れられているからである。これに関しては、既に「言論NPO」の評価が既に示しているとおり、少なくとも主要な政党(自民、公明、民主)は、一貫してそれについてほとんど触れられていない(そして、ここで評価する他の政党、つまり社民、共産、国民、日本、共生も同様であった)。というわけでこれは評価軸から除外する。次に私が必要だと考えるのは、主張する政策を推進するための理由である。これについては、民主、共産が明記している。共生はほとんど理念だけで、他の政党は政策だけ。とりわけ政権党である自民と公明が、政策を推進する「理由」から逃げているのはどういうことであろうか。

 1.2 評価
 それだけでなく、自民と公明の、教育に関する記述は、かなり通俗的な青少年言説に潤色されている。例えば自民については、《子供たちに「確かな学力」を約束するとともに、規範や礼儀を教える。学校評価を一層推進し、教育水準の向上を目指す》(自民、「008. 「確かな学力」と「規範意識」の育成」)とさらりと書いているけれども、まず子供たちの規範意識は本当に低下したのか、ということから検証されて然るべきだろうし、それについては多くの側面から疑問が突きつけられている(とりあえず、浅野智彦[2006]くらい読んでください)。また《国民の心と体の健康を守り、豊かな人間性を形成し、健全な食生活を実現するため「食育基本法」に基づき「食育」を推進する。「食事バランスガイド」を活用した「日本型食生活」の普及や「教育ファーム」等の農林業体験活動や地産地消を進め、「食育」を国民運動としてさらに展開する》(自民、「047. 「食育」-食べる・つくる・育む-」)などと書かれているけれども、まず本当に「食育」なるものの必要性が見えてこないし(食の安全に関する消費者教育ならともかく)、なぜ「日本型」に限定するのかもわからない。

 公明党だって負けていない。《すべての小学生が農山漁村で一週間以上の体験留学ができる機会を提供します。これにより、子どもの豊かな心を育み、地域コミュニティの再生に貢献します》《すべての小・中学生に少なくとも年一回、本物の文化芸術に触れさせる機会を提供します》(以上、公明、pp.22)などと書いているけれども、前者については、本当にそんな《体験留学》で《子どもの豊かな心を育み、地域コミュニティの再生》ができるのか、というよりもそもそも子供の心が貧しくなっているのか…というところが突っ込みどころであるし、同じページにおいては学生全員に奨学金を貸与する、と書いているが、どうせなら学費の全額免除くらい主張してください。というよりも、何で公明って、これほどまでに奨学金にこだわるのだろう。

 与党に負けない電波ぶりを発揮しているのが国民である。《先進国並みの教育費を確保するとともに、教員数を大幅に増やし、きめ細かな学校教育を展開する》(国民)はともかく、《ゆとり教育を抜本的に見直し、人間力を鍛える教育および基礎教育の充実を図る》(国民)などといわれた日には、正直ここに投票する気が失せてしまう。今更「人間力」はないだろう(この概念の不気味さについては、本田由紀[2005]を参照されたい)。それだけでなく《学校教育において、時代に見合った道徳教育を充実し、公共の精神の涵養を図る》《広く伝統文化に接する機会を増やすことにより、国民意識・愛郷心の育成を図る。また、「美しい日本語」の普及に取り組む》(国民)とも書かれている。「美しい日本語」をマニフェストに取り込むなんて、自民すらやっていないよ。

 民主の主張にも、自民、公明、国民に比較すればマシだけれども、それでも一部に疑問は尽きない。例えば高校や高等教育の無償化を主張しているけれども(民主、pp.24)、これについては財源が明記されていない。ただし、根拠として国際人権規約を挙げていることと、漸進的な推進とすることは明記している。高等教育については、民主はかなり明確かつ鋭い主張をしているけれども、初等教育については、「学校教育力の向上」が謳われているのみ。さらに、ここについても「コミュニティの再生」だとか、あるいは《教員の養成課程は6年制(修士)とします》(民主、pp.24)などと主張しているのが気がかりである。そもそも教員養成について、本当に修士でなければならない理由があるのだろうか(なお、いわゆる「教職大学院」の問題については、「今日行く審議会@はてな」の記事「日本に教職大学院なんていらない」と、佐久間亜紀[2007]を参照されたい)。

 もっとも評価できるのが共産であったが、やはり「政権党への批判は鋭いが、オリジナルの主張はあまり強くない」という、共産のマニフェストに特有の弱点が目立った。まず、《日本政府は国連・子どもの権利委員会から2度にわたって「高度に競争的な教育制度」の改善を勧告されています》《日本の教育予算の水準はOECD(経済開発協力機構)加盟国30カ国のなかで最低で、教育条件は欧米に比べてもたいへん貧困です》《すでに「いっせいテスト」とその公表をおこなった自治体では、「テスト対策のため文化祭や林間学校を縮小・廃止した」、「できない子どもを休ませた」、「先生が答案を書き換えた」など深刻な問題がおきています》(共産、「【14】教育問題」)という批判は実に痛快だし、また正当性もある。ところが主張については、《また「徳育」を「教科」にして特定の価値観を子どもたちに押しつけようとしています。しかも、安倍首相が押しつけようとしている価値観は、軍国主義を肯定・美化する戦前の価値観です》《憲法と教育条理に基づいた教育を追求します》(共産、「【14】教育問題」)などの「おなじみ」の文言を読んで、正直言って萎えてしまった。

 とりあえず改正後の教育関連の法令について言えることは、それらが「金は出さないが口は出す」(しかも、かなりうるさく)というものであり、それがますます教育現場の閉塞性を高めるのではないか、ということであり、それについては広田照幸や苅谷剛彦などの専門家が前々から主張してきた。この点を前面に押し出せばいいものの、残念でならない。

 なお、社民は基本的には「学校の教育力」に関する記述を除けば民主とほぼ同じで、日本は30人学級の推進を明記するにとどめている。共生の理念については、仰々しく構えているけれども、いざどのような政策をとるのか、ということについては見えてこない。あと、こういう記述があったのが笑えました。

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 又、英国の王立建築家協会が実施した調査では、すばらしいデザインの学校では不登校生は発生しにくく、教育効果は絶大であると結論づけている。(2007年国立新美術館における英国王立建築家協会会長の講演)病院でもデザインの良い病院では、患者の回復が早いことが分かっています。(共生)

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 さすがというか、なんというか…。

 2. 若年雇用
 2.1 総論および評価軸
 この分野については、平成17年の総選挙に比して、論じる環境が大きく変わった。まず、平成18年頃より積極的に採り上げられるようになった「偽装請負」「ワーキングプア」などの用語に代表されるような問題や、あるいは正社員と非正規雇用者の(賃金や待遇などの面での)格差、そして若年層における貧困の進行。期せずして起こったグッドウィル・グループやそこを牛耳る折口雅博のスキャンダル、そしてフルキャストやグッドウィルのユニオンによる運動、そしてそのほかの若年層による労働運動があったりと、本当に論じるべきことは何か、ということが少しずつ見えつつある(とりわけ派遣をめぐる問題については、奥野修司[2007]を参照されたし)。

 とはいえ、財界側も負けてはおらず(?)、「偽装請負」問題の渦中にあるキヤノンの御手洗冨士夫などは、「偽装請負」さえも合法化しようとするように働きかけているという。そしてそれをほとんど野放しにしてきたのが自民党というわけであるが、そのような状況をいかに評価するのか、という基軸が必要であろう。

 2.2 評価
 とりわけこの分野をめぐる問題について、特に私が重視されるべきであると考えるのが、いわゆる「就職氷河期」問題であるが、これについて明記していたのが、民主(pp.24)と社民であった。とはいえ両党とも、行なう施策としては主として職業教育やキャリカウンセリングが中心であり、果たしてそれが氷河期世代問題を解決するために必要なのか、という疑問が起こる。

 とはいえ、主要な野党3党(民主、社民、共産)は、待遇の格差の改善や、労働条件の向上などに積極的な姿勢が現れており、ここは評価できる。民主は、主として新しい法制度を提出することによって派遣や請負を規制し、また労働条件の向上を行なう、という姿勢である。もちろん、最低賃金の引き上げも主張している。行なうのは段階的だという(以上、民主、pp.23)。社民も、民主と方向性は同じである。ただし、長時間労働や残業代の不払い、あるいは派遣労働者を使用することができる職域の縮小などは、民主にはない主張である(社民、「なくせ 働く格差」)。共産はかなり熱心で、全ての政党で唯一「偽装請負」という言葉を使用している。また《ILO「雇用関係に関する勧告」(198号)を活用し、請負や委託で働く労働者を保護します》(共産、「【3】労働・雇用」)と、法的な根拠も明記している。国民も、正規雇用率の基準を設けることや、非正規雇用者の健康保険の加入の義務化を主張している。

 与党というと、これについてはかなり及び腰というか、従来の主張を繰り返しているだけという主張を受ける。まず自民は、「081. 働く人の公正な処遇に向けた取組みとパート労働者の待遇改善」で一応記述されているけれども、どうも時流に合わせて適当に付け足した印象しか受けない。他方で自民は、高齢者の再雇用については大変(?)熱心なようで、「077. 団塊世代を活用した「新現役チャレンジプラン」の創設」「078. 団塊世代の意欲や活力を活かし、その技能・技術を次世代に継承できる仕組みづくり」「079. 高齢者の活躍の場の一層の拡大」と3つの独立した項が設けられている(なお、就職氷河期世代問題を中心とする若年雇用の問題については、宮島理[2007]などに詳しい)。公明は、とりあえず職業教育でもやっていればいい、という感じだった。若年層の雇用を拡大する、といっているけれども、どのような手段を用いるか、ということは明記されていない(あとのほうに書いてある、中小企業の支援によって雇用を創出する、というのがそれに当たるのかもしれないが。公明、pp.19)。

 結論からすれば、とりあえず若年雇用に関わる問題を考慮に入れて投票する場合、自民や公明には絶対に入れてはいけない、ということが明らかになった。これだけでも一つの収穫だろう。

 3. メディア規制、「青少年健全育成」、少年犯罪
 3.1 総論および評価軸
 橋本健午による研究(橋本健午[2002])などに見るとおり、戦後の我が国においては、一貫して、まず何らかの青少年問題が「発見」され、それについて特定のメディアが敵視され、それに対する「善良な」市民や親たちによる規制が求められ、そして業界が自主規制に踏み込む、などというサイクルが行なわれ続けてきた(戦前にも、小説を規制せよ、という声があったようだ)。与野党問わず、一部の政治家の間には、それでもまだ足りない、もっと規制すべきだ、という声があるようだが、私はむしろ、このような不毛な歴史の流れを止める方向に行くべきだと考えている。なぜなら、感情的な対応によって規制される分野が、これ以上増えて欲しくない、と考えているからだ。昔も今も、規制を求める側の主張は変わらない。

 3.2 評価
 とりあえずこの分野については、もう電波の嵐で、笑いました。これについての記述があったのは、自民、共産、国民。まず、民主は既にマニフェストから引っ込めたメディア規制について、共産はいまだに主張している。

―――――

 雑誌やインターネット、メディアなどには性を商品化するような写真、記事、動画などが氾濫しています。女性を蔑視し、人格をふみにじる文化的退廃を許さず、人権尊重の世論と運動をひろげます(共産、「【18】男女平等」)

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 まるで自民のマニフェストでも読んでいるかの印象である(笑)。《性を商品化するような写真、記事、動画》が何をさすのか、ということについてまず明記しなければならないだろう。とりあえず、まず実在の児童に対する性的虐待、及びそれの記録物については厳しく規制されるべきだが、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとまでに性的なものを全面的に規制するのはよくない(それこそ、春画も規制しろ、といった「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」の某氏みたいに)。ちなみに日弁連は、児童ポルノについて、以下のような見解を示している。

―――――

 目にあまる児童ポルノコミックは、刑法のわいせつ物陳列、頒布、販売罪の構成要件該当性が検討されるべきであり、本法の対象とすべきではない。

 児童ポルノコミックの現状には、放置できないものがあるとの指摘はもっともである。しかし本法の保護法益は、実在の子どもの権利である。児童ポルノコミック規制を本法により行うことは、本法の保護法益を、刑法のわいせつ物陳列、頒布、販売罪の保護法益である「善良なる性風俗」に対象範囲を広げることになる。これは本法の目的をかえって曖昧にし、子どもの権利保護の実施を後退させる危険をはらむ。

 また児童ポルノコミック規制により、児童の性的搾取、性的虐待が減少するという証明はない。

 ポルノコミックにおいては、被害を受けた実在の子どもがいない。芸術性の高いコミックやイラスト、小説と、規制すべきとするポルノコミックとの線引きには困難な場合も想定され、いたずらに表現の自由を侵害する危険がある。目にあまるものについては、刑法のわいせつ物陳列、頒布、販売罪の構成要件に該当するか否かの検討をする余地はあるとしても、本法の対象とすべきではない。実在の子どもがモデルとなっていると推定されるようなコミックが存在するとするなら、名誉毀損罪等、他の犯罪として処断されるべきである。

 「子どもの売買、子ども売買春および子どもポルノグラフィーに関する子どもの権利条約の選択議定書」にも、コミック規制を義務づける条項はない。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/2003_09.html

―――――

 続いては自民。

―――――

 健全な青少年を育成する社会の構築をめざし、「青少年育成施策大綱」等に基づき、青少年の育成に係る施策を総合的・効果的に推進し、若年層の職業観・勤労観及び職業に関する知識・技能の育成等を図るためキャリア教育等を一層推進する。また、非行や犯罪被害、有害情報から子供たちを守るため、「子ども安全・安心加速化プラン」に基づく関連施策を一層推進する。(自民、「009. 青少年の健全な育成」)

―――――

 その前に、まず犯罪統計や、労働に関する統計くらい読んでくれ。そうすれば、いかに自分のやっていることが確かな根拠に基づいていないかわかるから。

 最後に国民。

―――――

 今日的な武士道精神や礼節を実践する個人や団体を表彰するため、日本版の「フェアプレー賞」を創設する。(国民、「5 規律とモラルを重んじる教育の実現/【健全な青少年の育成】)

―――――

 藤原正彦か!

 4. 子育て、幼児教育
 4.1 総論および評価軸
 赤川学は、その著書『子どもが減って何が悪いか!』(ちくま新書)において、女性の雇用が進んでいる国は子供もたくさん生まれてくる、という認識を喝破している。しかしながら赤川は、それでも男女雇用機会均等などの政策は必要である、と主張している。これは子育てに置き換えても成り立つのではないか。要するに、「少子化対策」のために子育て支援を行なうのは嘲笑の的でしかないが、それでも子育てに対する支援は必要である、と。例えば育児休業などの制度の整備は、漠然とした「少子化対策」のためではなく、その家族のためにこそ必要なのではないか。ところが、この認識に立つマニフェストは、それほど多くはなかった。

 また最近においては児童虐待の問題がよく採り上げられるけれども、これについてはかつても何回か採り上げられてきた経緯があり、どちらかといえば社会的な文脈において「発見」されてきたという側面のほうが強いのではないか(事実、児童虐待「増加」「急増」の証拠として用いられるのは、児童相談所に対する相談の件数ばかりである。これについては、むしろ暗数の発掘と見たほうがいいのではないか、という見方も成り立つ)。また、虐待と貧困などの関係性も論証されており、ひとり親に対する罰則の強化や、あるいは監視の強化にとどまる問題ではないことも、認識すべきだろう(詳しくは、上野加代子[2006]に収録された論文を参照されたい。また、「女子リベ  安原宏美--編集者のブログ」の「家と貧困」)。

 4.2 評価
 これについては、多くの正当が大体足並みをそろえていたので(例えば「子育て基金」の設立など)、あまり比較して評価するようなものではないかもしれない。この分野では、公明の以下の記述の電波ぶりを紹介しておけばいいだろう。

―――――

 児童虐待、育児放棄などを未然に防ぐため、「親学習プログラム」を推進し、親自身が育児を学ぶ環境を整えると共に、里親制度や児童養護施設の拡充を図るなど被虐待児の保護及び自立支援のための施策を拡充します。(公明、pp.8)

―――――

 《親学習プログラム》って…。ああ、この教育万能主義、本当に笑える。第一、昨今の児童虐待「増加」というのは、それが何回も繰り返されてきた「発見」の繰り返しでしかないし、そんな「プログラム」を学んで虐待が減少するのかはなはだ疑問だし、そもそもどんな「プログラム」なのか、公明は公開する責任がある。あ、もしかして、「教育再生」を全力で訴える、自民党の某議員が落選したときの再就職支援ですか(笑)?

 5. 結語
 今回マニフェストを検討してみたのだが、どうも全体としてつまらないというか、そんな印象を受けたような気がする。どうせならもう少し力を入れて欲しかった。まあ、私が争点となっている年金や社会保障の問題について少ししか目を通していない、ということもあるのかもしれないし、また(あくまでも想像だけれども)青少年問題はあまり票にならない、という通念があるのかもしれないが。

 とはいえ、どの政党であれ、こんなことを話してどうかという気持ちはあるけれども、もしこの選挙で負けた場合、いかに敗因を読み解くか、ということが重要になってくると思う。一昨年の衆院選においては、野党が大敗を喫したとき、政党自身はともかく、その政党の考えに近い自称「知識人」たちが、「B層」などといって、若年層をバッシングした。ちなみにこの「B層」という言葉は、自民党がマーケティングのために勝手に捏造した言葉である。それに便乗して若年層をバッシングするなど、恥ずかしくはないのか。

 おそらく(信じたくはないけれども)自民党が勝つという結果となれば、またぞろ若年層に対するバッシングが起こるかもしれない。だが、自らの反省を抜きにして、問題を「叩きやすい」若年層に押しつけるなど、言語道断だ。今回も、どうせ自民が勝ったら、「左派」は、若年層の投票率が高かったら「若者が安倍晋三を支持した」とわめき、低かったら「若者が行かなかったから負けた」とわめくのだろう。

 というわけで予防線を張っておく。「B層」って言うな!

 参考文献
 浅野智彦(編)『検証・若者の変貌 』pp.191-230、勁草書房、2006年2月
 橋本健午『有害図書と青少年問題 』明石書店、2002年12月
 本田由紀『多元化する「能力」と日本社会 』NTT出版、2005年11月
 宮島理『就職氷河期世代が辛酸をなめ続ける 』洋泉社、2007年3月
 奥野修司「「悪魔のビジネス」人材派遣業」、「文藝春秋」2007年6月号、pp.275-285、2007年5月
 佐久間亜紀「誰のための「教職大学院」なのか――戦後教員養成原則の危機」、「世界」2007年6月号、pp.123-131、2007年5月
 上野加代子『児童虐待のポリティクス』明石書店、2006年2月

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コメント

自民の食育についてですが、たしかにこの文書では食育の必要性までは説明されていませんけれども、大切な政策だと私は思いますよ(個人的には自民に入れる気は無いですが)。というのも、人間も30を過ぎると色々と体に不安が出てくるものなのですが、まともなものを食べるということは健康に生きる上で非常に重要な行動なのです。また日本型という提案も私は評価します。というのは、この島々でより健康に生きられるようなメシの食べ方の知識は、それぞれの土地にあった形である程度は伝えられているはずだからです。また近くで取れるものを食べればそれだけフードマイレージが少なくて済むという利点もあります。個人的にはジャンクフードばかり食べてロクに運動もしないことのリスクの方が、メディアで採り上げられる極端に危険な食品を一度や二度口にしてしまうリスクより遙かに大きいと思います。

ミクロネシア連邦におけるアメリカ型食生活の浸透とそれが引きおこした健康問題についての以下の文章もご参考になるかと思います。
http://hokulea.aloha-street.com/?p=172

投稿: かとう | 2007年7月24日 (火) 01時45分

[消費税増税 - 税率 10%, 16%, 18% or 30%?]
’07参院選:全候補者アンケート 消費税、自民「引き上げ論」74%-政党:MSN毎日インタラクティブ
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20070714ddm003010048000c.html
★ http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/images/20070714dd1dd7phj002000p_size8.jpg

財界や政府・自民党から消費税増税・法人税減税大合唱
http://www.toshoren.jp/Ctg-Toshoren_Undo_News/news2007_06/news2007_06-02.htm
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/news/3695/1184750808/
米国からの便り 消費税が16%?
http://kensirou2001.blog79.fc2.com/blog-entry-67.html
八国山だより 消費税を16%に
http://patience052.blog101.fc2.com/blog-entry-4.html

日本経団連意見書:「近い将来の税制改革」についての意見 消費税率引上げの展望
「消費税率を、第一段階として3%程度は引き上げるべき」
「消費税率を遅くとも2007年度までには10%とすべきである。」
「消費税で賄おうとすれば30%以上の税率」
「2025年度までの消費税率の増加を18%程度までに」

経団連の40億円の政治献金「斡旋」は何をもたらすか
3.(2)(i)② 消費税の税率引上げ
http://www.rikkyo.ne.jp/univ/hikita/JapaneseEconomy/2007/SEIJIKENKIN.pdf
http://www.rikkyo.ne.jp/univ/hikita/JapaneseEconomy/2007/SEIJIKENKIN.pdf#page=9
http://cs.koukokukaigisitsu.com/copy/5404

棄権は危険!そのわけは??
http://senkyo2.seesaa.net/
http://cs.koukokukaigisitsu.com/copy/5348
言戯: 選挙に行かない人って、バカだなあ。
http://maruccho.way-nifty.com/sobae/2004/07/post_19.html
http://cs.koukokukaigisitsu.com/copy/5353

投稿: No More Tax | 2007年7月26日 (木) 07時57分

今回の総選挙は、民主圧勝で自民の好き勝手が出来なくなりました。

それ自体は喜ばしいのですが、我々にとって懸念材料があります。

今回、「サブカル規制反対を前面に押し出した」樽井良和氏が落選したことです。

敗因は、樽井氏の知名度の低さ(斯く言う私も、2ちゃんねるで初めて知った)と業界層の票が足りなかったことにあったわけですが、

問題は樽井氏が「オタク層が政治に無関心だから負けたのだ」と考える恐れがあるということです。

これに対する対策が必要です。私個人は「樽井氏の周知を徹底させ」衆議院解散選挙に備えることを考えていますが、

後藤さんも、何がしかの対策を考えるようお願いします。

まずは用件のみにて失礼します。

投稿: シグマ | 2007年7月30日 (月) 23時56分

【雇用問題】各政党メール・フォーム

雇用に不満がある人は政党に直接メールした方がよい。
メルアドを知られるのが嫌なら、使い捨てのフリーメールを取得して使用すればよい。
今がチャンス。というより、今が「ラストチャンス」かもしれない。

●民主党 web-site
https://form.dpj.or.jp/contact/
●民主党 ネクスト厚生労働大臣 藤村修
衆議院議員 藤村修
http://www.o-fujimura.com/voice.html
●民主党 ネクスト厚生労働副大臣 山井和則
衆議院議員 やまのい和則(かずのり)
http://yamanoi.net/
山井和則 , 山井和則
●民主党 ネクスト厚生労働副大臣 中村哲治
中村てつじ公式WEBサイト - メール
http://tezj.jp/modules/contact/
●社民党OfficialWeb┃お問い合わせ
http://www5.sdp.or.jp/central/inq/inq.htm
●日本共産党ホームページの著作権について
http://www.jcp.or.jp/service/mail.html
kenpou25@jcp.or.jp

非正規雇用の対象業務 - Google 検索
http://www.google.co.jp/search?ie=auto&q=%22%C8%F3%C0%B5%B5%AC%B8%DB%CD%D1%A4%CE%C2%D0%BE%DD%B6%C8%CC%B3%22

投稿: vsParties | 2009年8月 4日 (火) 17時34分

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先日行われた6・30アキハバラ解放デモについては、ネット上で賛否が割れている。当サイトの「アキバホームレス検証」を取り上げてくれた、にゅーあきばどっとこむ様からの評価が辛いのはさびしいが、一人目の賛同人として、やはり何かコメントをしなければなるまい。 デモの進行については、肯定的評価としては、人が沢山集まった事と、それぞれが思い思いの主張やパフォーマンスを出来た事、事故や事件が起きなかった事がある。その反面として、グダグダでまとまりがなかった事、明確な主張が見えなかった事、サウンド機器がうまく働か... [続きを読む]

受信: 2007年7月16日 (月) 02時48分

» 「ハーメルンの笛吹きだ♪」「いっそこのまま厄介な人達を街の外まで連れて行ってくれないかしら?」 [冬枯れの街]
2006/07/17は「小森霧」ならぬまさに「ひきこもり」商法のメモですね。そしてこういう輩を批判し続ければそれはそれで「反反若者論」をネタにしているということになるのでしょうか?更には、そういう正反関係がむしろ「若者論」という構造を温存することに加担しているとか言う社会学者(思想家)とかいそうだね…ちっ。先回りして答えておくとどう見ても「若者」を擁護する人間がいない、「若者」を叩くことがノーリスクだからこそこの有様になったんですけどね。 丸山氏がヤンキー先生義家氏を一喝 >台風4号の直撃を免れた... [続きを読む]

受信: 2007年7月19日 (木) 01時46分

» 若年者の自殺は不道徳だから? [氷河期世代からの反撃 ]
知人から、これは余りに酷いから見てくれということで、メールをもらったので拝読した。何でも毎日新聞の地方版の記事らしい。茨城県選挙区の自民党の候補者らしいのだが。 以前に、紹介および参照させていただいたno_action_letter総務省の迅速な対応の....... [続きを読む]

受信: 2007年7月19日 (木) 23時55分

» いまどきの若者文化 [フリーターが語る渡り奉公人事情]
京都の寺町通り。沖縄からやってきた期間限定のアクセサリーショップで。 店内に吊られた数多の文字入りTシャツのひとつ。 [続きを読む]

受信: 2007年8月12日 (日) 06時09分

» 生活を圧迫する教育費 [フリーターが語る渡り奉公人事情]
「授業料、待ってください。」 大学出ていないのは服を着ていないも同じとする社会常識。失業産業とも言われる専門学校。教育しないと人間にはなれないという学校教育依存社会。青少年の学校への社会的隔離はいつ終わる? 〈2008.8.11文章を一部訂正しました。大意に変わりありません。〉 ... [続きを読む]

受信: 2007年8月12日 (日) 06時12分

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